「1日10時間寝てもまだ寝れる」
「寝ても寝ても昼間も眠い」
「たっぷり寝てるのに朝起きられない」
そんなお悩みをお持ちの方は、意外と多いものです。
一般的に春は眠気を感じると言われていますが、季節の変わり目や年度初め・学期始め、引っ越し後など、ライフイベントの前後に感じる場合も多いことが分かっています。
そこで、ここでは寝ても寝ても眠気が取れない原因や、対処法を徹底解説します。
寝ても寝ても眠い原因
寝ても寝ても眠い原因は、病気、ストレスなどの心因的なもの、睡眠バランスの乱れ、夜型傾向やロングスイーパーなどが考えられます。
【原因その1】病気
睡眠に影響する病気としては、以下のものがあります。
病名 | 特徴 |
ナルコプレシー | レム睡眠。比較的短時間だが1日に何度も起こる |
突発性過眠症 | ノンレム睡眠。一度に長時間眠る |
反復性過眠症(クライネ-レビン症候群) | 毎日16〜20時間の睡眠が数日〜数週間続く |
ナルコプレシーとは、夜しっかりと睡眠を取っていても、日中自分ではコントロールできないほどの眠気に何度も襲われて、眠ってしまう病気です。
1回の睡眠はごく短時間ですが、この状態が1日に頻発します。
ナルコプレシーの特徴はレム睡眠で、入眠時や金縛り時に見られるレム睡眠(浅い睡眠)であることです。
突発性過眠症は、1日に何度も眠気のサイクルに襲われるのはナルコプレシーと同じですが、1回の眠りが長時間だというのがナルコプレシーとは異なります。
反復性過眠症(クライネ-レビン症候群)は、昼夜を問わず1日に16〜20時間寝てしまう日が、数日〜数週間続きます。
一般的には3ヶ月に1度の割合で、1年に1回以上起こると言われ、夢と現実の狭間にいるような感覚に襲われて食欲がなくなるなど抑うつ症状にも似ているのが特徴です。
これらの病気のリスクは、運転中に突然眠ってしまうなど、機械操作中に突然睡眠に襲われることで、命の危険もあるということです。
対処法としては、投薬治療、睡眠リズムを整える、バランスの良い食事・適度な運動などがあります。
診療科:睡眠外来、心療内科、精神科、メンタルクリニック、神経内科 |
【原因その2】ストレスなど心因的なもの
心因的な原因としては、以下のものがあります。
原因 | 特徴 |
緊張 | 心身の緊張で交感神経が活発になり眠れない |
不安・抑うつ気分 | 不安やうつ的気分になり眠れない |
不眠症 | 眠りたいのに眠れない |
うつ病 | うつ病による睡眠障害 |
双極性障害 | 双極性障害による睡眠障害 |
心因的なことが原因で夜きちんとした睡眠を取れないと、日中眠気に襲われます。
特に季節の変わり目で体に疲れが出たり、引っ越しや新学期、新年度などのライフイベントでストレスを感じたりしていると、無意識に緊張や不安を感じることも多いものです。
夜眠れない、または眠りが浅い「睡眠障害」の定義は、
- 入眠困難:なかなか寝付けない
- 中途覚醒:夜間に何度も目が覚める
- 早朝覚醒:予定より早くに目が覚めてしまう
といった症状があります。
ストレスが原因である場合、以下のような例があります。
- 明日プレゼンがあり、緊張のあまり寝付けない
- 仕事でプロジェクトがうまくいっていないことによる不安
- 他人に言われた一言が頭から離れず、あれこれ考えてしまう
- 「あのときああ言えばよかった」とグルグル考えてしまう
- 眠ろうとすればするほど目が冴えてしまう
上記のようなことは、心身のバランスが崩れたことが原因です。
つまり、体は疲れているのに頭や心が過剰に働いているせいで寝付けない、眠りが浅くなってしまうなどの症状が出るのです。
緊張すると肩などが緊張しますが、体が緊張しているとリラックス状態に入りにくいため、不眠気味になります。
また、うつ病では高確率で睡眠障害を伴うことが分かっており、うつ病にかかっている人の約80%〜90%の人が不眠症と言われています。
双極性障害の場合、躁状態になると寝なくても活発に活動し、疲れも感じません。
特に寝不足や徹夜明けなどで、うつ状態から躁状態に切り替わると言われています。
対処法としては、
- ストレス要因を取り除く
- こまめにストレスを発散する
- リラックスする時間を意識して作る
- 医師に相談し、睡眠導入剤を処方してもらう
などがあります。
診療科:睡眠外来、心療内科、メンタルクリニックなど |
【原因その3】睡眠バランスの乱れ
睡眠バランスの乱れが原因で、きちんと寝ても眠気が取れない場合は、以下のような事が考えられます。
外因的原因 | 時差ボケ、交代勤務、不摂生、昼夜逆転 |
内因的原因 | 睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、周期性四肢運動障害 |
外因的な原因としては、海外出張や旅行による時差ボケや、看護師や24時間シフト制の仕事による交代勤務、夜遅くまでゲームなどをして就眠リズムが崩れることなどです。
内因的原因としては、寝ているときに呼吸が10秒以上止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群」や、足がむずむずして眠れない「むずむず脚症候群」、寝ているときに無意識に足が動いてしまう「周期性四肢運動障害」などがあります。
外因的な原因は、生活リズムを整えることで睡眠も自然にもとに戻ります。
しかし、内因的な原因の場合は治療が必要となるため、病院にかかるのがおすすめです。
診療科:睡眠外来、脳神経内科、精神科、神経内科など |
【原因その4】夜型傾向・ロングスイーパー
夜型傾向というのは、比較的新しい概念で、遺伝子(クロノタイプ)によって決められていることが分かっています。
自分ではコントロールできない無意識レベルで定められているため、
早く眠りにつきたくなる人も、夜に能率が上がると感じる人も、すべて351個の遺伝子で決められている。このため本人にはどうしようもない(「夜型」の人が努力しても、決して「朝型」になれない:研究結果)
というわけです。
一般社会は朝型タイプに沿って、会社や学校の活動時間が決められているため、朝が苦手な夜型傾向の人にとって生活しづらいのは当然です。
日本では、朝型、夜型、その中間である中間型は1/3ずつ存在すると言われており、特に10代〜30代の若い世代は夜型傾向の人が強いと言われています。
一方、ロングスイーパーは1日10時間以上眠りが必要な人のことです。
1日10時間以上たっぷりと睡眠をとると、日中の活動にも支障が出ません。
ただ、10時間寝るには朝の活動開始から逆算して人より早めに就寝する必要があり、物理的に不可能な人もいます。
そのため、慢性的な寝不足になってしまう人も多いです。
ロングスイーパーの原因ははっきりしていませんが、遺伝であるという説もあります。
病気には分類されておらず、対処法としてはこまめに昼寝をとる、休日にたっぷり寝るなどの工夫が考えられます。
たっぷり寝ても起きられない原因
「夜はたっぷり寝てるのに、朝起きられず気がついたら昼近くだった」という人も多いでしょう。
このようなお悩みの場合は、以下のような原因が考えられます。
- 睡眠相後退症候群(睡眠・覚醒相後退障害)
- 起立性調整障害
- 低血圧
【原因その1】睡眠相後退症候群(睡眠・覚醒相後退障害)
睡眠相後退症候群(睡眠・覚醒相後退障害)とは、睡眠ホルモン(メラトニン)が正しく分泌されないために朝起きれなくなることを指します。
寝る前にスマホやパソコン、タブレットなどのブルーライトを浴びることにより、メラトニンの分泌が抑えられてしまうことが原因です。
対処法としては、夜寝る前1時間は液晶からの光を目に入れない(見ない)ことです。
よく「寝る前のスマホは目に悪い・交感神経が高ぶってしまう」とも言われますが、それだけでなく、メラトニンが分泌されないことによって体内時計が狂ってしまい睡眠にも影響し、ひいては日中の活動にも悪影響を及ぼすのです。
【原因その2】起立性調整障害
起立性調整障害とは、
“体を起こした時に血液がその重みで下半身に移動してしまうのを自律神経(交感神経)の作用で防止する機能が弱まることで、体を起こしたり立ち上がったときに、立ちくらみやめまい、気分不良をきたす疾患”とされています。(青山・表参道 睡眠ストレスクリニック)
起立性調整障害の特徴としては、
- 立ちくらみ、朝の起床困難、気分不良、失神や失神様症状、頭痛など。症状は午前中に強く、午後には軽減する傾向がある
- 症状は立位や座位で増強し、臥位にて軽減
- 夜に目が冴えて寝られず、起床時刻が遅くなり、悪化すると昼夜逆転生活になることがある
などが挙げられており、特に児童などにも多く見られます。
自律神経の不調による血圧コントロールの障害が原因なので、対処法としては薬物療法の他、生活リズムを整える、水分と塩分を十分に摂るなどがあります。
診療科: 小中学生→小児科 高校生以上→神経内科、心療内科、循環器内科など |
【原因その3】低血圧
昔から「朝起きられないのは低血圧だから」と言われますが、低血圧が原因で起きられない理由は、体温が低く十分な睡眠がとれていないことが考えられます。
通常は、就寝した後に体温が下がり、眠りが深くなります。明け方には体温が自然に上がって起きられるのです。
しかし、血圧が低く体温が低い人は、就寝前から体温が低いため眠りが浅くなりがちで、明け方も体温が上がらないためスッキリと起きることができません。
対処法としては、
- 栄養バランスの良い食事を心がける
- 適度な運動をする
- 就寝1時間前に湯船に浸かって体温を上げる
- 寝る前に水分を摂る
などがあります。
睡眠の質を上げる食事に関しては、以下の記事に詳しく書いたので、読んでみてくださいね。
睡眠の重要性
睡眠は、心身の疲れを取るだけでなく、以下のような重要な役割があります。
- 疲労回復:心身の疲労を回復する
- 脳内の老廃物を排出:睡眠中に脳の老廃物が排出されます
- 免疫力の増強:睡眠中は免疫物質が生成されます
- 記憶の定着:日中に記憶されたことが睡眠中に定着します
- ストレス解消:寝ている間に内分泌系のリズムが整い、日中のストレスが解消されます
- 肥満防止:食欲ホルモンがコントロールされ、肥満を防ぎます
- 肌質の向上:睡眠中に分泌される成長ホルモンによって肌のターンオーバーが向上します
私たちが寝ている間に、こんなに多くのことがなされているなんて、ちょっと驚きですよね。
睡眠は私たちの細胞がいろんな作用を施して体と心を修復し、整えてくれる大事な時間です。
そのため、自分にあった睡眠サイクルを把握し、上手に睡眠を摂ることが大切なのです。
まとめ
寝ても寝ても眠気が取れない原因には、
- 病気
- ストレスなど心因的なもの
- 睡眠バランスの乱れ
- 夜型傾向やロングスイーパー
など様々な要因があります。
また、たくさん寝ているのに起きられない場合の原因は、
- 睡眠相後退症候群(睡眠・覚醒相後退障害)
- 起立性調整障害
- 低血圧
などです。
自分でコントロールできるものに関しては、まずは睡眠リズムを見直してみることが重要ですが、中には転職などを考えなければならない場合もあるでしょう。
睡眠外来や心療内科などでは、症状の程度に合わせて睡眠導入剤など軽い薬を処方してくれます。
どうしても改善しない場合は専門の医師に相談してみるのもおすすめです。