「ずっと生きづらさを感じている…」「人間関係が苦手…」
「自分は承認欲求が人より強いと思う」「人の言動に左右されてしまう」
という人は、愛着障害が原因かも知れません。
愛着障害とは、乳幼児期の親との関係の中での必要な事柄がうまく行かずに、成長するにつれて情緒や人間関係に問題が生じることをいいます。
この記事では、愛着障害について詳しく解説します。
最後まで読めば、あなたの生きづらさのヒントが見つかりますよ。
愛着障害とは
愛着障害は、養育者(ここでは親とする)との愛着形成がうまくいかず、情緒や対人関係に問題が生じることをいいます。
一般的には主に虐待や離別など、特別な体験が原因とされています。
ただし、特別な事情がなくても幼少期に受けた親の何気ない言動や行動も原因になると考えており、愛着障害は誰しもが少なからず持っていて、それが生きづらさにつながっていると私は考えています。
愛着とは
愛着とは、乳幼児期に形成されるもので、子どもの世話を主にする親と、その子どもとの間に生まれる心理的な結びつきです。
生まれたばかりの赤ちゃんは、お腹が空いた、おむつが汚れて気持ち悪い、痛い、かゆいなど、すべてのことを泣いて表現します。
親は赤ちゃんが泣くたびにすぐに駆けつけて、赤ちゃんの物理的・心理的欲求を満たしてあげます。
そのため、親は赤ちゃんにとって、自分の不快を取り除き、抱っこや話しかけなどのスキンシップで快を与えてくれる唯一無二の特別な存在となります。
赤ちゃんは、生まれて3ヶ月頃から人見知りが始まりますが、これは養育者をはっきりと認識して、他の人と区別するからです。
これが愛着形成の第一歩といわれています。
愛着形成は、
- 基本的な信頼関係の形成
- 自分の存在と安全確保
- 自己表現やコミュニケーション能力
に重要な役割を果たします。
特定の人(多くの場合は母親)との間に特別な信頼関係を築き、全面的に受け入れてもらうという体験を通して、不安や恐怖を感じたときは養育者に守ってもらえるという、安心安全な”安全基地”を獲得します。
子どもはハイハイから始まってやがて歩き出しますが、安全基地があるからこそ、安心して活動範囲を広げることができるのです。
また、親とのやり取りの中で色々試したり経験したりしながら、自己表現やコミュニケーション能力を培っていきます。
世の中の1/3は「不安定型愛着」
乳幼児期から幼少期にかけて、何らかの事情で親との愛着関係が結べないと、生育過程で社会との関わり方が不自然になったり、大人になってからも生きづらさを感じてしまいます。
例えば、養育者が定まらない、安定した愛着を得られないなどです。
これを「不安定型愛着」と呼びますが、何も離別や虐待を受けたことがある人に限ったことではありません。
世の中の1/3の人は、程度の差こそあるものの不安定愛着があるといわれています。
不安定愛着の度合いが強いと「愛着障害」と呼ばれ、日常生活にも支障をきたすため投薬などが必要なケースもあります。
以前は「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」と「脱抑制型愛着障害」の2つが定義されていました。定義では5歳以前の発症が基準となっており、現在よりも狭義な内容です。 しかし、最新の愛着障害の専門的な診断基準(「 DSM-5-TR 精神疾患の分類と診断の手引」(医学書院)では、「反応性アタッチメント症(≒反応性愛着障害)」のみが採用されています。 |
ここでは、多くの人の悩みの元となる「不安定愛着」に焦点を当てて解説していきます。
不安定愛着の代表的なスタイル
愛着障害には、主に以下の4つのスタイルがあります。
- 不安型
- 回避型
- 混乱型
- 安全型
愛着スタイルの型はキッパリと分けられるわけではなく、どんな人でも何割ずつかを持っています。
人によって「自分はこの愛着スタイルが多めの傾向にあるな」という方よりがあることが多いです。
以下では、各愛着スタイルの特徴を詳しく説明します。
不安型(とらわれ型)
「不安定型」は子どもの時の愛着パターン、「とらわれ型」は大人になってからの愛着スタイルの呼び方です。
不安型の特徴や原因は以下のとおりです。
特徴
- 承認欲求が強く、相手の顔色や機嫌に敏感で傷つきやすい
- 見捨てられ不安が強く、常に周囲に気を遣う
- 自己価値が低く、不当な要求にも応じてしまいがち
- 自分は他者を傷つける存在と思ってしまう
不安型はどんな場面に対しても不安があり、親といても情緒が安定しません。親の愛情が一定ではないため、親がいなくなっても探索行動をしない、スキンシップを求めながらも激しく抵抗するという面があります。
また、不安が強く自己価値が低いので、子どもの頃はいじめられやすいというもの特徴のひとつです。
原因として考えられること
親が、時には愛情たっぷりに接したと思えば、時には無視するなどの一貫しない態度であった場合に多いとされています。
また、過干渉や親自体が不安定だったり神経質だったりした場合、いつ急変するか分からず愛情は無条件ではないと感じます。
そのため、愛情を強く求める気持ちと同時に、愛情を拒絶する気持ちの両方を持ち合わせているのも大きな特徴です。
大人になってからの対人関係
基本的に人に依存する傾向がありますが、愛情を求める気持ちと拒絶する気持ちが同居してるため、関係が定着しないことが多いです。
一定の距離がある場合は、優しく気遣いもできる心地よい関係が保てますが、親密になって距離が近くなると依存してしまい、もたれかかってしまいます。
これは子どもの頃に愛着が不安定だった反動で、愛着対象者への期待が過度に大きくなってしまうためです。
そのため独占欲や嫉妬、猜疑心、不満などが人より強くなります。
また、愛着関係を客観的に捉えることができず、仕事などで知り合った異性にも、勘違いして恋愛感情を抱いたりすることがあります。
回避型(愛着軽視型)
「回避型」は子どもの時の愛着パターン、「愛着軽視型」は大人になってからの愛着スタイルの呼び方です。
回避型の特徴や原因は以下のとおりです。
特徴
- 愛着軽視型とも呼ばれ、大人の態度の愛着スタイル
- 親密さを回避し、自由や自己責任を良しとする
- 感情に対して鈍感になることで自分を守る
回避型の人の特徴は、感情に左右されず理性的に振る舞うので、クールでドライなイメージです。
一方で、親しい人間関係は好まず、情緒的な結びつきや関わりには居心地の良さを感じられません。
回避型の人にとっていちばん大事なのは、人に縛られないことです。いつも自由でいたいし、人に迷惑をかけることを嫌います。
何に対しても本気で熱くなれず、面倒くさがりな一面も。
原因として考えられること
子どもの頃に親との関わりが乏しく、安全基地がうまく形成されなかったことが原因と考えられています。
子どもの頃に褒められた記憶がない、父親が育児にあまり関わっていなかった、過剰な支配や身体的虐待を受けた場合に回避型になるとされています。
回避型の子どもは、親と離れても無反応で、泣いたり探索行動をしたりしません。親と再会しても無関心な子も多いです。
また、養護施設などで育てられた場合も、回避型になる確率が高いとされています。
愛情を重要視していないため、子どもの頃の記憶が曖昧だったり、否定的な記憶を無意識に排除しているケースが多いですが、親からあまりかまわれていないことが後で判明したりします。
大人になってからの対人関係
仲間といるより1人でいるほうが気楽で、自分のことを話したり自己表現したりするのが苦手と感じ、人との過度な関わりを避けます。
ふだんは人との対立が苦手ですが、ストレスがたまると突然爆発し、周囲を驚かせるタイプです。
相手の痛みを感じづらく、相手を傷つけていることに気づかず、幼少期はいじめる側に回るケースも多いでしょう。
感情に流されないので、冷静な判断をすることが得意です。仕事の場ではつねに理性的で、集中力を発揮します。
混乱型(未解決型)
「混乱型」は子どもの時の愛着パターン、「未解決型」は大人になってからの愛着スタイルの呼び方です。
混乱型(未解決型)の特徴や原因は以下のとおりです。
特徴
- 不安型と回避型が混ざりあった状態
- 一人では不安なので人と仲良くしたいが、親密になるとストレスを感じるなど
- 自己開示できないが、人に頼りたい気持ちも強い傾向がある
回避型と不安型がないまぜになっていて、1人だと不安で寂しいのに、親密な関係にはストレスを感じてしまいます。
成長する中で一見安定しているように見えても、親との関係で傷ついた心の傷が癒えていないため、別離や孤立などに遭うと混乱型に戻ってしまうのが特徴です。
境界性パーソナリティ障害や解離性障害になる可能性が高いとされます。
原因として考えられること
親自体が混乱しているために、子どもとのコミュニケーションも混乱させてしまうことによって生じます。
背景としては、心理的な外傷体験など、著しく不安定な親の場合に生じやすいとされています。
大人になってからの対人関係
成人になっても、親からの拒否や分離・虐待・不適切な養育経験・喪失などの外傷経験を心理的に解決できていないため、無意識に恐怖感情を持ち続けていることがあります。
甘えるのが下手ですが、人と距離を取ることができません。相手と親密になるとうまくいかなくなる傾向があり、他人からのちょっとした言動や行動を、「自分を蔑ろにされている」と受け取ってしまいがちです。
安全型(自律型)
「安定型」は子どもの時の愛着パターン、「自律型」は大人になってからの愛着スタイルの呼び方です。
安全型(自律型)の特徴や原因は以下のとおりです。
特徴
- 他者を信頼し、心を開きやすい
- 他者からの愛情を信頼できる
- 人間関係でのストレスをためにくい
- 相手の反応や評価に左右されない
親の養育下にあるときは、親を「安全基地」とし、親と分離すると抵抗や不安を感じます。
ただし、親と再会すれば分離のストレスがなくなり、気持ちを安定させることができます。
原因として考えられること
生後から2〜3歳になるまでの愛着関係が良好で、十分なケアのもと養育されています。
多少不安定な愛着環境であったとしても、元々の性質によっては、影響なく安定型になるケースも多いです。
大人になってからの対人関係
親に対する過去の肯定的・否定的な記憶や感情が統合されており、内容にも一貫性があります。
安全基地が確立されて安定しているため、自分の考えを持ちながら、安心して社会と関わることができます。
他者への愛情を当然のように信頼しているため、気軽に助けを求めたり、相談したりすることができます。人の反応も肯定的に捉えることができ、誤解が生じることもありません。
また、本音で話し合うことがお互いの理解を深めると信じており、迎合したり、相手に合わせ過ぎたりすることもありません。
自他を尊重しているので、拒否しても相手が傷つくと不安になることがなく、相手への敬意や配慮も忘れません。
人と別れる時も、一時期には悲しい気持ちになりますが、過度にネガティブな感情を引きずったり、必要以上に不安定になったりすることがありません。
仕事面では良好でバランスの良い人間関係を築くことができ、仕事にも前向きで楽しみながら取り組めます。
参考:ブリーフセラピー・カウンセリングセンター
大人になってからの愛着スタイルの改善方法
愛着スタイルは誰でも多少なりとも持っているものです。ただ、それが原因で自分らしく活き活きと生きられていないなら、とてももったいないですよね。
大人の愛着スタイルの改善方法は、大きく以下の4つになります。
- 安心安全な場を持つ
- カウンセリングなどで親(養育者)との過去の関係を改善する
- インナーチャイルドを癒す
- トラウマを解消する
安心安全な場を持つ
まずは、安心安全な場を持つことが重要です。
安心安全な場とは、心を開いて素直な感情をさらけ出しても大丈夫な場所、いわば心の拠り所です。
身近な人を思い浮かべるかも知れませんが、身近な人を安心安全な場にする場合、その人との関係性が変わってしまう可能性もゼロではありません。
そのため、仕事や日常の人間関係といった利害関係がなく、接点がない第三者であることが好ましいでしょう。
具体的には、プロのカウンセラーやセラピスト、あるいは傾聴サービスなど、守秘義務を守れる専門家がおすすめです。
▶カウンセラーやセラピスト、コーチも在籍する傾聴サービス「LivelyTalk」
カウンセリングなどで親(養育者)との過去の関係を改善する
カウンセリングなどで、親との過去の関係を改善するのもおすすめです。
カウンセリングでは、過去の親との出来事を振り返り、感情を書き換えて癒やすということをします。
おすすめのカウンセリングの種類
- インナーチャイルドセラピー
- ブリーフセラピー
- ゲシュタルト療法&交流分析
インナーチャイルドを癒す
親との出来事で傷ついた感情は、インナーチャイルドとなって心の奥底に住んでいます。
インナーチャイルドを癒やすことができれば、過去の出来事や歪んだ信念から開放されて、自分軸で生きていくことが可能となります。
トラウマを解消する
トラウマは、心の中に強く根を張っているので簡単に解消するのが難しいですが、専門家の力を借りて徐々に軽減させ、解消していきます。
トラウマを解消するには、認知行動療法や、苦しいことを思い出さずに解消できるブリーフセラピーなどがおすすめです。
まとめ
生きづらさには、乳幼児期からの愛着形成が大きく影響しています。
自分の愛着スタイルを把握して再形成しなおすことで、生きづらさから開放されるでしょう。
自分の愛着スタイルはどれかな?と気になる方は、以下のサイトで診断できるので、是非試してみてくださいね。
愛着(アタッチメント)スタイル診断【公認心理師監修】
(ブリーフセラピー・カウンセリングセンター)