うまく怒りを表現できない、怒りを無意識に抑え込んでしまうという人は、けっこう多いと思います。
怒りを表に出さないことは、一般的にはいいことのように捉えられていますよね。
しかし、怒りは大切な自分の感情のひとつであり、抑え込んでしまうとストレスが溜まってしまいます。
ときには健康状態にも悪影響を及ぼすため、できれば外に出したほうがいいのです。
あなたも怒りをうまく表現できずに、この記事にたどり着いたのではないでしょうか。
この記事では、そんな怒りをうまく表現できない・感じることができない人に向けて、 原因や対処法をお伝えします。
最後まで読めば、自分の怒りを表現しやすくなって自分自身を変えることができ、周囲との人間関係も変わってきますよ。
怒りを出せない・感じられない原因とは?
怒りを出せない・感じられない原因は、ひとつではありません。ですが、その多くは幼少期の体験が元になっています。
ここでは、怒りを出せない・感じられない原因とその改善方法について解説します。
1. 感情の抑圧が習慣化している
感情を表現することが苦手な人は、幼少期から感情を抑圧する習慣が身についていることがあります。
例えば親や周囲から「あんたはすぐ怒る」「お兄ちゃん(おねえちゃん)なんだから怒らない!」など、”怒ることは悪い”と教え込まれた場合などです。
日本人は、”協調性を大事にする”という文化が根づいていて、それは決して悪いことではありません。
しかし、物事には何でも裏と表があり、「怒ることや強い主張は調和を乱す」という意識が働くために、怒りはネガティブなものという無意識が根底にあったりします。
それで、自己主張よりも協調性を重んじる多くの日本人は、怒り方が下手だといわれています。
2. 怒りに対する恐怖心がある
過去に怒りによって人間関係が悪化した経験がある場合、怒ることそのものが怖くなってしまうことがあります。
例えば、
- 友達と喧嘩して修復できず、そのまま物別れになってしまったことを悔やんでいる。
- 思春期に自分が大声で怒ったことで母親が怖がり、それ以来関係がギクシャクしてしまった。
- 恋人があなたとの約束よりも他の約束を優先したため恋人を強く責め立てた。そのせいで、恋人との仲が冷え切ってしまった。
などです。
このような体験があると、同じ体験をしたくないため無意識に怒りを抑え込み、怒りを感じなくなることがあります。
3. 自分の感情に気づいていない
日常生活の忙しさやストレスによって、自分の感情に無関心になってしまうことがあります。
なぜなら、次々とやってくる目の前の現実に対処しなければならないため、頭(理論)が優先的になっているからです。
その結果、心(感情)はおざなりになってしまいます。
例えば、仕事が忙しいと、食事もスケジュールの一環として捉え、まるでロボットのように”こなす”だけになって味わうことをやめてしまい、食べても「美味しい」という感情を感じなくなったりすることがあります。
しかし、そんな状況でも心は正直なので、あなたが自覚していなくてもイライラや不安、疲れとして感じるのです。
4. 感情を無視してしまう傾向がある
怒りを感じても、それを無視してしまう傾向がある人もいます。
「自分は怒るべきではない」「感情を表に出すのは大人げない」という固定観念を持っていると、上がってきた感情を無視してしまうのです。
例えば、「大人はいついかなる時も穏やかに対処すべき」という理想を持っていると、怒りが一瞬込み上げてきても頭(理論)で押さえつけてしまいます。
たしかに、時と場所によっては、あたり構わず怒り散らすのはどうかと思いますよね。
ただ、落ち着いて反論するなど、怒りの出し方にも方法があるし、その場は我慢してもあとで人に聞いてもらうなど、後から放出する方法もあります。
怒りを昇華させる方法として、相手の主張を尊重しながら自分の主張も伝えるアサーティブコミュニケーションという方法もあります。
別記事で紹介しているので、興味があればこちらもお読みくださいね。
▶アサーティブコミュニケーションとは?自分も相手も大切にする対話の方法
5. 身体的な症状として現れることがある
感情が抑圧されると、身体的な症状として現れることがあります。
具体的には慢性的な疲労感、頭痛、消化不良、肩や首・背中のコリ、腰痛などです。
心と体はつながっているので、感情が抑圧されるとストレスが生じ、体にも影響が出るのです。
怒りを出せるようになるための4つの方法
ここでは、怒りを出せるようになるための4つの方法を紹介します。
自分にあった方法をみつけて、ぜひチャレンジしてみてください。
いくつかの方法を組み合わせて使うのもおすすめですよ。
1. マインドフルネスで五感を研ぎ澄ます
マインドフルネスには様々なやり方がありますが、ここで紹介するのは日常的にできる”五感を研ぎ澄ます”という方法です。
具体的には、今やっている行動をひとつひとつ丁寧に感じるということです。
例えば、ご飯を食べているときは、茶碗を持っている重さや茶碗の温かい感触、口の中に広がる複雑な味や食材の食感などを感じてみます。
陶器の茶碗と土物のごつごつした茶碗でも感触は違いますし、食材も肉の硬さや柔らかさ、野菜の繊維など、口の中で色々と感じることができるでしょう。
食事だけでなく、洗い物をしているときの水の感じ、洗剤の泡、食器を持つ手や腕の動きなど、日常生活を丁寧に過ごすだけで五感を鍛えることができます。
このように五感を感じることを日頃から鍛えていると、怒りの感情も上がってきやすくなります。
2. 紙に書いて破り捨てる
紙に書いて破り捨てるのは、感情を認めて発散する行為です。
なぜなら、怒りが起こった原因や感情そのものを書いて明確にした後、処理して攻撃性をぶつけて発散することができるからです。
例えば、コピー用紙やメモ、チラシの裏などに「◯◯は私の手柄を横取りした!」「こんちくしょう!」「卑怯者!」などとなぐり書きをします。
誰に見せるものでもないので、丁寧に書く必要はありません。字にも怒りをぶつけてください。
その後、書いた紙をビリビリに破くのです。
人によっては破くよりも丸めて足で踏んづける、燃やす(安全な場所でね)などのほうがすっきりするという人もいます。
最後はもちろん、捨てましょう。
紙はノートなど残るものでなく、捨てられるものがベストです。日記などに書くと、後で読み返して怒りが再燃する可能性があるからです。
3. クッションや枕をパンチする
イライラやモヤモヤがある時は、クッションや枕など、壊れないものを思いっきりパンチします。
なんだかわからないけれどスッキリしない感情を、拳のパワーに込めるのです。
体を動かすことで、「私、こんなに怒ってたんだ」と自分の感情に気づくことがあります。
同じクッションや枕を使うのでも、顔を押し付けて思いっきり叫ぶというやり方もあります。
顔を押し付けるのは大声が外に漏れないようにするためです。
そのまま大声で叫んだら、きっと家族や隣近所の人がびっくりしてしまいますよね。
理屈や理論よりも感情や感覚のほうが得意という人の場合は、この方法でスッキリすることが多いです。
4. とことん話しを聞いてもらう
人と話していると、それだけでカタルシス効果があり、気持ちが軽くなることが多いです。
特に女性は話すことでストレスを解消すると言われています。
感情や感覚よりも理屈や理論のほうが納得できるという人は、とことん話しを聞いてもらうのがおすすめです。
このタイプは理屈や理論といった左脳が優位な男性に多いですが、女性でも思考タイプの人には向いています。
話しているうちに頭の中が整理され、自己理解が深まります。
また、相手がいることによって、違う視点からの見方を発見できるといったメリットもありますよ。
身近な人に話すのはちょっとなぁ…という人は、こんなサービスもおすすめです。
▶あなたの「今話したい」にピッタリの相手がみつかるLibelyTalk
怒りも大切な自分の感情のひとつとして認める
冒頭でもお伝えしましたが、怒りは自分の大切な感情のひとつで、自分の身を守る役割があります。
例えば、動物の親子に敵が迫ったとき、母親は子どもを守るために敵に対して牙を向いて追い払おうとしますよね。
人も、自分の自尊心や価値観など、心の大切な部分が侵されそうになったとき、怒りを感じてガードする役割があるのです。
例えば、
- 不当な扱いを受けたとき
- プライバシーが侵害されたと感じたとき
- 自分の価値観を否定されたとき
- 自分自身が否定されたとき・傷つけられたとき
- 自分の好きな人や愛する人が傷つけられたとき
- 信頼を裏切られたとき
など、
自分自身の存在や価値観を否定されたりけなされたりすると、人は怒りを感じます。
それは自分の存在を守るために必要な怒りです。
もしも、その怒りを「この場で波風を立てたくないから」と頭で考えて押し殺してしまうと、自分自身で自分を否定したことになってしまいます。
また、怒りは消えてなくなるのではなく、心にしっかりと残っています。
そして、行き先をなくした怒りは、「こんな自分が悪いんだ」「自分はダメだ」と自分自身を攻撃してしまうのです(自責)。
これによって起こることは、自己肯定感が下がってしまい、自信がなくなってますます自分の主張がしにくくなるという悪循環です。
あなたを大切にできるのは、あなただけ。
感じた怒りはしっかりと正しく処理して、自分自身の心を守りましょう。
上級編|怒りを分析する方法
怒りを分析するには、モヤモヤや気持ちのつっかえ、違和感を感じた時に、以下のことを紙に書き出してみるのがおすすめです。
1. 出来事
モヤモヤした場面を思い出し、客観的に事実だけを書きましょう。
例えば、職場で自分が陰で何か言われていると感じたとします。
このとき、出来事としては以下のように書きます。
例)職場でAさんとBさんが何か話していた |
2.その時感じたこと
その時感じたことをそのまま書きます。
例)AさんとBさんは私を見ながら話していたような気がする |
3.考察
考察を書きます。1の出来事と2の感じたことを見比べて、客観的に考察します。
例)AさんとBさんは私を本当に見ていたかな?見ていたとしても、私が通りかかったから偶然見ただけかも。それに、私のことを話していたという確証もない。 |
こうしてみると、最初のモヤモヤがだいぶ軽くなったのではないでしょうか。
このように、出来事と感情(感じたこと)を切り離すことで客観的に見ることができるようになり、さらに書くことによってもより客観的に考えることができます。
まとめ
怒りを感じられない、または表現できない理由には、感情の抑圧、恐怖心、自己認識の不足などが関係しています。
怒りの感情を正しく表現するには、怒りの矛先を自分に向けて自責するのではなく、事実とそれに伴う自分の内面をありのまま観察することが大切です。
日頃から五感を研ぎ澄ますなどのセルフトレーニングをして、怒りを正しく扱えるようになり、ストレスのない人生を送りましょう。